第32章 Sexual harassment
おいらの腕の中でほんの少し落ち着きを取り戻したかずが…ようやくゆっくりと話してくれた。
ドラマの脚本家の橋本さんに撮影前からセクハラを受けてた事。
拒絶すれば…皆の前で容赦ないパワハラを受けてた事。
家族と一緒のシーンでは竹中さんが、職場のシーンではマルが側に付いてガードしてもらってた事。
今日…いきなり楽屋に押し掛けられて…レイプ…されかけた事。
何とか…挿れられる直前に蹴り飛ばして逃げた事。
逃げた先で…松兄に会った事。
腸が煮えくり返るって…こういう事を言うんだなと思った。
出来るなら…殺してやりたい。
きっと何度殺しても…気持ちは収まらないだろう。
本当に…殺してやろうか…。
和「………さと…」
「ん?」
おいらの腕の中でかずは…瞳を潤ませながらおいらを見つめた。
和「………変な事…考えないでね」
「え?」
和「もう平気だから。それに…松岡くんがジュリーさんに話してくれたから…少しは収まると…思うから…」
「でも…」
和「お願い…こうして抱き締めてくれたらそれでいい」
「………分かった」
かずの身体をその腕に強く抱き締めた。
和「言わなくてごめんね…」
「本当だよ。今度からはちゃんと言えよ」
和「うん…」
「3人には…」
和「俺が話すよ。黙ってても事務所から話しは伝わるだろうし…それだったら俺の口から…話す」
「側に居るから。おいらも智也も。皆も」
和「うん」
ようやく少しだけかずが微笑んだ。
そのかずの手を握りながらおいらはそっと口付けた。