第32章 Sexual harassment
ー智sideー
「よし。お腹いっぱいだなとも」
ミルクを飲ませた後、智也を抱っこして背中を叩く。
智也はおいらに身を委ねながら目をとろとろさせる。
「よしよし…」
おいらも親父振り…板に付いてきたかなぁ…。
子育てって大変だけど…楽しいな。
ふと、時計を見るともうすぐ2時。
まだかずは帰らない。
智也「げぽっ…」
智也がげっぷを出した。
「お。出たなー。よしベッド行こうか」
そのまま寝室に戻り、ベビーベッドに智也を寝かせた。
智也は寝付きが良く、ミルクを飲んだら直ぐに寝てくれる。
お陰で夜中のミルクやりも想像してたよりは比較的楽だった。
それより…今のおいらにはかずの方が心配だった。
撮影が始まってから…帰りはいつも2、3時。
勿論ドラマの撮影はよく押すからそうなるのは仕方ないけど…こうも連日続くってのはさすがに珍しい事だった。
最近また細くなった気がする。
細くというよりは…やつれた。
顔色もあまりよくなくて…かずが心配でたまらない。
聞けば脚本家があの有名な橋本さん。
撮影にも顔を出し、演出にもかなり口を挟んでくる奴だと聞いた。
でもかずの役者としての実力は誰もが認めるもんだから…口出しされる事もないだろうと思ってたけど…。
それとも…何か別の理由があるのか…。
いずれにしろ、かずを待つしかない。
帰ったら…聞いてみようかな。
そう思った時…マンションのエントランスの方のインターホンが鳴った。
ん…?誰だこんな時間に…。
「はい…え?」
画面に写ったのは…毛布にくるまれたかずを抱き抱える松兄の姿だった。
松岡「大野!」
「何!?松兄何で!?かず!?」
松岡「説明は中でするから。中に入れてくれ」
「あ、うん!」
ロックを解除したおいらは待ちきれずに…鍵を掴み、部屋を飛び出したのだった。