第32章 Sexual harassment
橋本「話があるんだが」
にやにやしながら俺に近付いて来る男。
もう…恐怖でしかない。
橋本「明日の撮影の内容なんだがね」
「………あの…今日はちょっと…」
橋本「予定でもあるのかい?」
「いえ。ちょっと疲れてて…明日にして頂けると…」
橋本「断るのかい?」
「………」
橋本「おいで。君の楽屋で話そう」
肩を掴まれ彼の手が俺のお尻に伸びた。
「や…」
「いい加減にしてくれませんか」
俺は驚いてその声がした方を振り返った。
竹中「橋本さんそろそろお止めになりませんか」
橋本「竹中くん」
父親役の竹中さんが…セットの奥から現れた。
竹中「こんな時間ですよ。それにまたすぐ撮影が始まる。今日はもう解散でしょ」
「竹中さん…」
竹中「こんなんじゃいい作品にしようにも出来ませんよ」
橋本「しかし…私は…」
竹中「それに言わせてもらうと…ドラマは監督の物です。脚本家が細かく口を挟むのは…どうかと思いますよ」
橋本「………」
橋本さんは…竹中さんの言葉に返す事が出来ず…暫く押し黙った後、ようやく諦めてくれた様だった。
橋本「今日は帰りますよ。では」
竹中「お疲れ様」
「お疲れ様でした…」
竹中「お疲れだったねにの君」
「………竹中さん…助かりました…」
竹中「いいや、今日の事はさすがに行き過ぎだと思ったからね」
「ご迷惑お掛けして…」
竹中「君は悪くないよ。でも…一度事務所に相談したらどうだ?」
「大事にしたくなくて…」
そう…。
俺が我慢すればいいんだ。
俺が…。
竹中「そうか。でも無理はするなよ」
「ありがとうございます」
俺は竹中さんに深く頭を下げた。