第30章 家族の絆
ー和也sideー
覚えているのは…家に響く怒号と物が壊れる音。
押し入れの中で…静まるまで姉ちゃんと抱き合っていた事。
和母「ごめんね」
何度も言いながら俺達を抱き締めてくれていた母さん。
憎んでた。
あの人のせいで母さんがどれだけ大変だったか…傷付いたか。
従姉妹がジャニーズ事務所に履歴書送ったのは幸いだった。
「母さんに楽をさせたい」
その思いが1番だった。
あいつが何処でどうなろうと関係無い。知ったこっちゃない。
そう思ってた。思ってた…のに…。
和母「和。もうご飯食べないの?」
「ん…」
和母「殆ど食べてないじゃない。駄目よ食べなきゃ」
「分かってるけど…」
翔さんも言ってたけど…産後の食事は出産で失われた体力を取り戻す事。そして母乳の出をよくする為、毎日がかなりのご馳走だった。
産んだ翌日なんて…お祝い善とかって…ステーキが出た。
こんなに食べられないって思ったけど…ぺろっと食べられて…。
でも今日は…何を食べても味がしない。美味しくない。食欲湧かない…。
和母「緊張してるの?」
「………する訳ないでしょ。向こうが勝手に来るんだから」
そう言うと母さんは苦笑した。
和母「意地張るのはいいけど…ご飯は食べないと駄目よ?赤ちゃんの為だからね」
「分かってるよもう…」
俺は食器を手に詰め込む様にご飯を食べた。
さとしは今…あいつを迎えに行ってる。
多分…もうすぐここに連れて来るだろう。
どうでもいいって言ったのに…何で連れて来るんだよ。
「母さんは…本当に許せるの?あいつの事…」
和母「………そうね…」
「あいつのせいで…苦労したのに…俺は…忘れてない…」
和母「人は…過ちを犯すものよ。大事なのは…過ちを犯した後どうするか。あの人は…反省してる。そう信じてる」
「………でも…」
智「ただいま」
ガラッと扉が開き、さとしが中に入って来た。
そして…
智「どうぞ」
廊下に向かって声を掛ける。
「………」
ゆっくりとした足音と共に…中へともう1人入って来る。
「………」
和父「………和也…」
その瞳を見つめながら…俺は唇を噛み締めた。