第27章 Tears
潤「うま…すげぇなこの鯛めし」
「本当?良かった」
潤「うん。美味い。にのやっぱり料理上手いよなー」
「翔さんの次に、でしょ?」
そう言うと照れ臭そうに潤くんが笑う。
潤「上手いっていうか…優しいんだよな。翔の味付け。家庭の味っていうか…ホッとする。まぁ…それが上手いって言うんだろうな」
「ふふっ。ご馳走さまです」
切れ長の瞳が恥ずかしそうに下がる。
「翔さん…毎日料理してるんでしょ?昔は包丁も持った事無かったのに…凄いよね」
潤「結婚するって決まってから…本当によく頑張ってたよ翔は。俺がやるから無理するなって言ってたのにさ。聞かなかった。まぁ最初は…凄かったけどさ。何をどうやったらそんなに焦がすんだってゆーか…笑えた」
「ふふっ」
潤「でもさ…一生懸命に料理してくれたり…失敗して半泣きになってる翔…本当に可愛くてさ。本読んだり…ネットで調べたり…うちの母さんに聞いたりして頑張ってたよ。本当…いじらしいんだよな」
「翔さんのお母さんじゃなくて?」
潤「向こうのお義母さん…料理得意じゃないんだって。それに…『嫁として松本家の味を覚えたい』って言ってたみたい。母さんが言ってた」
「本当…真面目だよね」
潤「うん。それにさ…『妻として夫に恥をかかせたくない』って。俺には言わないんだけどさ。そう言うの聞くと…どんな料理でも美味しく感じるんだよ」
「翔さん言ってた。『どんな酷い料理でも潤は残さずに美味しいって食べてくれた。だから頑張って美味しい料理食べさせたい』って」
潤「そっか…ふふっ」
嬉しそうに潤くんが笑う。
「だから頑張ったんでしょうね。愛の力」
潤「そうだな…。でもさ、未だに初チャレンジの料理は失敗すんだよ。そういうとこも可愛いんだよな。翔らしくて」
「ふふっ、だね」
潤「うん…ご馳走さま。美味しかった」
潤くんが片付けようとしたお皿を俺は受け取った。
「俺がやるよ。潤くん疲れてるでしょ」
潤「いいのに」
「いいの。俺にやらせて?」
潤「じゃあ…ありがと」
「コーヒー入れるね」