第27章 Tears
翔さんを怒らせた…。
どうしよう…。
妊娠してしまった上に…それを黙ってた。
太陽「かじゅまんまー」
その場に立ち尽くす俺を太陽くんは心配そうに見つめる。
「太陽くん…どうしよう。ママに怒られちゃった…」
翔さんを追い掛けたい。
でも…拒絶されるのが怖くて足が動かない。
俺はただ太陽くんと一緒にその場に立ち尽くしていた。
5分程…経っただろうか。
リビングの扉が開き、翔さんが戻って来る。
「翔さん…!ごめん俺…まさかこんな時期に妊娠するなんて思ってなくて…」
翔「何で言わなかったの」
そう言う翔さんの表情は…予想とは裏腹に穏やかだった。
「………翔さんが辛い時に…俺が妊娠したなんて言えなくて…。ごめんなさい…」
翔「何で謝るの。はい、これ」
「………え…」
翔さんが俺に…紙袋を差し出す。
まさか…これ取りに行ってたの?
俺は太陽くんを翔さんに渡し、受け取った紙袋を開いた。
「………これ…」
翔「太陽が使ってた産着。あげるから…良かったら使って」
「しょ…さ…」
翔「2人目産まれた時に使うつもりだったけど…いつ産まれるか分からないし…もしかしたら…授からないかもしれない。だから…にのにあげる。良かったら使って。その方が…俺も嬉しい」
「翔さん…」
翔「まだ辛いけど…太陽が居るから。もし出来なくても…構わないって…覚悟してる。潤も…そう言ってくれたから。だから平気だよ。にのが赤ちゃん授かってくれて嬉しいんだ」
「翔さん…!」
俺…馬鹿だ。
この人は…こんなにも心が広くて温かい人なんだ。
口聞いてくれないなんて…浅はかな考え…恥ずかしい。
「ありがとう翔さん…ごめんね…馬鹿でごめん」
翔「泣くなよ」
「うん…あのね…翔さん。やっぱりこれ…頂けない」
翔「え…」
「大事な産着だから貰えない。だから…大事に使ってちゃんと返すよ。太陽くんの弟か妹の為に」
翔「………にの…」
「ね」
翔「ありがと…にの…」
俺達は微笑み合いながら…抱き合った。
きっと…授かるよ。
2人目も…3人目も。
俺も翔さんも…。