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君と僕の見ている風景【気象系BL小説】

第27章 Tears


翔「にの…そんなに気使わなくていいのに。もう元気だよ」


リビングから太陽くんを抱いた翔さんが顔を覗かせる。


「俺がしたいの。翔さんの側に居させて?」


夕飯の用意をしながら俺は振り返り、微笑んだ。


今日のお昼に翔さんは退院した。
あいにく潤くんは仕事で付き添えず、オフだった俺が希望して翔さんに付き添った。


翔さんの力になりたい。
1日でも早く…翔さんの可愛い笑顔が見たい。
でも俺にはこれしか出来なくて…。


翔「凄いねにの。鯛めし作れるなんて。あ、いい匂い」


「智がよく釣ってくるから。自然にレパートリー増えちゃって」


蒸らしていた鯛めしがもうすぐ出来上がる。


太陽「まんままんま」


太陽くんも早く食べたいといった感じで俺の並べた料理を見つめていた。


今日の献立は鯛めしに揚げ出し豆腐、そして鶏肉のソテーにサラダ。
ちょっとバラバラかなぁ…まぁいいか。


「よし、じゃあ蓋開けますよ」


翔「お願いします」


「オープン!」


蓋を上げると立ち上る湯気。


翔「うわーいい匂い」


翔さんが微笑みながらお釜を覗き込む。


「うん…上出来」


俺も顔を近付け香りを嗅いだ。


「うっぷ…!」


翔「にの…!?」


一瞬、料理が失敗したのかと思った。
大好きな匂いの筈が…ムワッとした気持ちの悪い香り。


俺は慌てて流しに走った。


「うっ…げほげほっ…!」


でも違う…。
これは…つわり。


どうして今きちゃうんだよ…。


翔「にの…大丈夫?」


「ん…うん…ちょっと一気に湯気吸い込んじゃったみたい…ははっ」


気付かれない様に笑って誤魔化した。
でも…出産経験のある翔さんには通用せず。


翔「にの。もしかして…」


「………」


思わず顔を反らし、思いきり『図星』の態度を取ってしまった。


翔「………何ヵ月なの?」


「………4ヶ月…です」


翔「………」


「ごめんなさい…!翔さんが辛い時にこんな事になって…!本当に…ごめん…」


すると翔さんは何も言わずに太陽くんを俺に抱かせる。


翔「ここに居て」


そのまま翔さんはリビングを出て行った。


「翔さん…!」


太陽くんを抱き締めながら…俺は翔さんの背中に呼び掛けた。
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