第26章 救世主
お狐様『私のせがれがした事が…気に入らないと申すか』
「いや…その…そういう訳では…」
ヒュゥゥと俺達の回りを…冷たい風が舞う。
怖い…怒ってる?
お狐様『おぬし達…楽しんでおったではないか。毎日の様に交わり合ってのう…』
「あ…いや…」
お狐様『それで…戻せとな』
「………」
お狐様の鋭い目が怖くて…俺は黙ってしまった。
でも…そんな俺の手を握り、前に立ったのは翔さんだった。
和(翔)「わがままを承知で頼んでます。お願いします」
お狐様『………』
和(翔)「………確かに…ここ数日俺達は…身体が入れ替わったせいで…普段じゃ絶対やらない様なお遊びをやってしまいました。でも…それがあったから余計に強く感じたんです。『夫とちゃんと愛し合いたい。自分の身体で…夫と愛し合いたい』と。だから…お願いします。どうか元に…戻しては頂けませんか…?」
お狐様『………』
「………お願いします…」
翔さんと一緒に俺はお狐様に頭を下げた。
すると静かに俺達を見据えていた瞳が…少し微笑んだ。
お狐様『人間とは…不思議な生き物だ』
そう言うと…ゆっくりと俺達に向かって手をかざした。
お狐様『………元に戻してしんぜよう。油揚げのお礼だ』
「あ、ありがとうございます…!」
和(翔)「ありがとうございます…!油揚げ…また持って来ますから」
お狐様『ありがたい。頼んだぞ』
そしてかざされたその手から温かい風が吹いたと思ったら…俺達の意識はそこで飛んでしまった。