第26章 救世主
和(翔)「ふぇぇ…」
「た、助けて…」
恐怖で腰が抜けてしまった俺達はその場に座り込みながら…泣きじゃくっていた。
するとその影が…ゆっくりと形を変えていく。
「え…」
和(翔)「な、に…人…?」
その不思議な光景に…俺達はいつの間にか泣くのを止めていた。
『………を言う…』
「………?」
和(翔)「今声…聞こえた?」
「うん…」
和(翔)「わ…!」
するとその影が人形になり…ついに姿を表した。
和(翔)「うっそ…」
「………お狐…様…」
俺達の目の前に現れたのは…古い着流しを身につけた…長い銀髪の人…。
いや、人じゃない。
だって…その頭には三角の耳と…後ろから生えるふわふわの尻尾。
お狐様『久方振りの供え物。礼を言おう』
ハスキーで少しセクシーなその声でお狐様は俺達に話し掛けてくる。
そして…俺達がお供えしたであろう油揚げの最後の1枚を…ぺろりと平らげた。
「………」
和(翔)「………」
その美しい姿に…俺も翔さんも見惚れていた。
まるで…映画に出て来る様なその姿…まるで…妖孤。
お狐様『おぬし達は確か…私のせがれが世話になった者達だな』
「せ、せがれ…?」
和(翔)「あの子狐の…」
お狐様『せがれが世話になったな。新しい身体は…どうだ』
「じ、じゃあ入れ替わったのって…」
お狐様のせい…!?
和(翔)「何でそんな…」
お狐様『おぬし達が望んだのであろう。せがれが助けて貰った礼に願いを叶えたいと申しておったからな』
和(翔)「そんな…望んでません」
お狐様『お互いを羨んでおったであろう。違うか?』
甦るあの日の記憶。
「確かに…翔さんが羨ましくてなりたいって思ったけど…。でも…本気じゃなかったんですよ。元に…戻しては頂けませんか?」
お狐様『元に…だと?』
お狐様の目が…キラリと光った。