第19章 慟哭
扉を開くと…そこには誰も居ない。
「………監督…?」
呼んでも勿論返事は無かった。
その時…パタンと扉が閉まる音と、カチャリと鍵を掛ける音がする。
「えっ…」
振り返るとそこには…。
「ヨ、ヨコ…!」
横山「………お疲れ翔くん」
「………何でここに…居るの…」
横山「………」
ゆっくりとヨコが近付いて来る。
「ヨコ…答えて…」
ゆっくりと後退りする。
横山「何で逃げんねん」
そう言うヨコの顔は…あの時の、キスシーンの時のヨコだった。
「ヨコ…。最近おかしいよ。俺の知ってるヨコじゃない。どうしちゃったんだよ…」
横山「………俺の知ってるヨコ?ははっ、笑わせんなや」
壁際まで追いやられ、俺は動けなくなった。
横山「翔くんの知ってるヨコってなんや。いつもヘラヘラ笑ってる俺?ワーワー騒いでる俺?」
「………違う…」
横山「上部だけでしか俺の事見てへんかったくせに。俺は…俺はこんなに好きなのに…ずっと…ずっと好きやってんぞ!!」
「っっ!!」
真横の壁に拳がヒットする。
横山「翔くん…。好きや。俺ずっと翔くんの事好きやってん。なのに何で俺の事見てくれへんねん…」
「………ヨコ…ごめ…」
横山「何で?なぁ。何であいつなん?あいつなんかより俺の方がずっと翔くんの事愛してるんや。ずっと!!」
怖い…怖い…。
怖くて声が出ない。
足が震えて…立ってるのがやっとだった。
「ヨコ…お願い許して…」
横山「翔くん…俺の物になってぇな…頼むわ」
「で、出来な…」
横山「………出来ないなんて言わせへん。翔くん…好きや」
「や、嫌っっ…!」
近付いて来るヨコの顔。
俺は気力を奮い起こし、ヨコを思いきり押した。
横山「いって…!」
ふらつくヨコを押し退け俺は入口に向かって走った…つもりだった。
「あ、やっ!」
後ろから腕を掴まれそのままソファーに押し倒されてしまう。
「や、止めてっっ…!」
ヨコ「静かにして翔くん…頼むから…」
「ん、んんっっ!!」
片手で口を覆われ、もう片方で両腕を掴まれる。
「んーっっ!!」
横山「好きや…翔くん…」
首筋にヨコの唇が触れる。
助けて…潤…!!
俺はもがきながら必死に潤に助けを求めた。