第73章 押された背中
智香「私…やっぱり邪魔なのかなって…」
「………は?」
椅子に座り、カフェオレのカップを受け取りながら智香ちゃんは呟いた。
智香「………」
「何でそう思うの?何か…言われた?」
智香「ううん何も…。それに私はパパもお母さんも大好き…」
「じゃあ…」
智香「たまに思うの。やっぱり私はお母さんと血が繋がってなくて…それで…パパと仲良くするのも私に気を使ってるのかなって…」
「智香ちゃん…」
智香「もしかしたら…『高校卒業したら家出てけ』なんて言われたらどうしようって…もしかしたら中学校かもしれないなんて…たまに考えるの」
不安げな瞳を湛える智香ちゃんを見て、俺は中腰になり彼女と目線を合わせた。
「智香ちゃん…大丈夫だよ。にのは…お母さんはそんな事思ってない。断言出来る」
智香「………本当に…?」
「本当だよ。お母さんはいつも言ってる。『智香ちゃんが居てくれて良かった』『智香ちゃんが居ないと駄目だ』って」
智香「………お母さんが…?」
「うん。きっと天国のママ…安心してるんじゃないかな」
智香「………」
「智香ちゃんは大野家の長女だよ。誰に何言われようと胸張って生きていこう。亜香里ママの為にもね」
智香「うん。ありがとう翔ママ…!」
「ううん」
うっすら涙を浮かべる智香ちゃんを俺は目一杯抱き締めた。