第73章 押された背中
放送が終わり、そのままバラエティー番組が始まった。
でも俺達は黙ったまま、ぼんやりと頭の入らない映像を観ていた。
でも10分程経った頃、漸く太陽が口を開いた。
太陽「………お父さん」
「………ん?」
太陽「………お母さん…せい…せいてき…」
「………性的暴行だよ」
太陽「………それって…分かんないけど…でも…」
「………太陽が1歳になったばかりの頃かな…お母さん…また赤ちゃんが出来たんだ。嬉しかった。家族が増えるって…でも…」
太陽「………」
「………お母さんのファンだっていう男の人に…誘拐された。3日間…お母さんはその人に捕まってた。お母さんは何とか…お腹の赤ちゃんを守ろうとしたんだけど…駄目だった。何度も…その人にお腹を蹴られたって。何度も何度も…それで…赤ちゃん…」
太陽「………死んじゃったの?」
「………うん。本当に…酷い傷だった。死ぬかもしれなかった。でもお母さんは何とか助かったんだけど…赤ちゃんは…死んでしまった。太陽の妹だった」
太陽「………妹…」
「お母さんは今は元気になった。でも…お母さんの身体には消えない傷が残ってて…そのせいで…赤ちゃんが出来にくい身体になったんだ」
「結婚する時にお父さんお母さんに言ったんだ。3人子供が欲しいって。だからお母さん何とかしてもう1人でも子供が欲しいって頑張った。頑張ったけど…やっぱり難しくて。その時の赤ちゃんも入れて…3人…赤ちゃん失ったんだ。覚えてるか?何度か入院した事あっただろ?」
太陽「うん…少しだけ」
「ごめんな…太陽…」
感極まった俺は…目の前の息子を強く抱き締めた。