第73章 押された背中
ー潤sideー
深夜、帰宅した翔から村尾さんの事を聞いた。
堪えていたのか玄関で泣きながら俺にしがみつき、ひたすら泣いた。
村尾さん…あの報道番組をスタッフと一緒に作り上げた人。
俺達の番組にもゲストで出てくれて…翔が『パパ』なんて呼んで。
でも…本当に報道の世界では翔の父親の様な人だった。
翔のこの仕事に見せる姿勢は村尾さんの意思を受け継いでる。
散々泣いて落ち着いたのか…今翔は俺の隣でカレーうどんを平らげた。
「ふふっ、ほらカレー付いてるよ」
翔「ん…ありがと」
親指で拭ってやると唇を尖らせる。
「翔の癖だよなそれ」
翔「何?」
「よく唇尖らせる。子供みたいに可愛いんだよな」
翔「むぅ…褒めてるのそれ?」
「ふふっ、褒めてる褒めてる」
翔「もう…」
翔が笑いながら立ち上がり食器を片付ける。
「翔いいよ俺が洗うから。疲れてるだろ?」
翔「ありがと。じゃあお茶入れるよ。潤も飲むよね」
「ありがとう」
手早く食器を片付けながら隣でグラスの準備をする翔を見つめる。
思いきり泣いて少しでも落ち着いてたならいいんだけど…。
翔「冷たい緑茶でいい?潤」
「ん?いいよ」
振り返る翔に俺は微笑みかけた。