第72章 葛藤
「………りんちゃんが産まれて…俺も妊娠して…この間もさ、翔さん…何も言わないけど…これだけ一緒に居れば分かるじゃん。俺だって感じたから潤くんなら余計に感じてるんじゃないかなって…」
潤「………この間さ…話したんだよ。話したって言うか…提案してみたんだ」
「提案?」
潤「正直俺も…りんちゃん見たら子供欲しいなって思った。あの時はさ…翔の思いに答えようとして…『協力』に近かった。でも…今は俺も…治療して授かるならって思った。翔の気持ちが1番だけども…俺も…今同じ土俵に立ってるんだって思った。だから…『もう一度頑張ってみようか』って…でも…今は翔は同じ土俵に立ててない」
「………どうして…?」
潤「………怖いって。三度も流産して…もしまた妊娠してまた流産したら耐えられないって。それに…」
潤くんが少し言葉に詰まりながら話すのを俺は黙って聞いていた。
潤「多分…思い出すんだと思う。不妊なんだって現実と一緒に…過去の事…」
「………無理矢理…」
最後まで言えなくて…唇を噛み締めると潤くんが頷いた。
潤「そのせいで出来ないんだって…全ての原因はそこからなんだって思ってるんだと思う。だから今は翔の気持ちが…」
「………」
どれだけ…あの日の出来事が深く深く…翔さんの心に傷を付けたのか。
翔さんの気持ちを思うと…悲しくて辛くて…俺は涙を溢してしまった。