第72章 葛藤
柔らかいバスタオルの感触と…潤の腕。
潤が抱き締めたまま優しく俺の髪の毛を拭いてくれた。
「………いつも…」
潤「ん?」
「いつも…こうしてくれた。あの時も…」
潤「あの時?」
「身体の傷…俺が見てここで泣いていた時…」
潤「………あぁ…」
「『俺が綺麗にしてやる』って…言ってくれた」
潤「そう?」
「俺…綺麗?」
潤「綺麗だよ。翔はずっと変わらない。綺麗だよ」
身体を拭いた後、潤は俺にパジャマを着せながら頷いた。
「潤…俺も赤ちゃん欲しいよ…でも…」
潤「うん」
「怖い…怖いんだよ。俺達の事だけじゃない。もう…失いたくないんだ…」
潤「………」
「また…俺達の腕をすり抜けて先に天国に行かれたら…俺は…」
潤「………そっか…」
「ごめん…ごめんなさい…でも…あんな思いは…」
潤「分かった。だからもう泣かないで。大丈夫だよ」
「うん…」
潤「俺もごめんな。思い出させて…」
「ううん…ごめんなさい…」
潤「いいから。ね?大丈夫…」
優しい潤の声と唇が…俺をゆっくりと包んでいった。