第71章 新たなスタート
智「………え?マジ?」
「うん。10月だって出産予定」
智「………マジか」
夜。仕事から帰って来た智に妊娠の事を告げると驚いて口をパクパクさせていた。
「………あのねさとし」
テーブルに夕食を置いた俺は智の隣に座る。
智「4人か…」
「うん」
智「………札幌ベビー…」
「………あのね。赤ちゃん産まれたらこれまで以上に忙しくなると思う。だから…」
智「どした」
「………夫婦の時間…また無くなるかも…」
智「………なんだよそんな事気にしてたんか」
智が俺の頭をくしゃっと撫でる。
智「夫婦の時間なんてな…年取ってから嫌って程あんじゃん」
「さと…」
智「それに…ちょっと思ってたんだよね」
「………何を?」
智「ほら…りんちゃん見てたらさ…また欲しいなって。何となく思ってた。でも大変なのはかずだから…無理に作るつもりは無かったけど。それに1番はかずの気持ちだしさ」
「そう…だったの…」
智「かず。かずは大丈夫か。4人も…」
「………嬉しい。凄く嬉しいよ。でも…」
智「………翔くん?」
俺が黙って頷くとさとしが立ち上がった。
智「お前が何度妊娠したって…翔くんがお前に変な気持ち思う訳ないだろ。逆にそんなに気使われる事の方が嫌なんじゃないか」
さとしが椅子に座る俺の前にしゃがみ込んだ。
「うん」
智「………それに…全力で迎えないとチビに失礼だぞ。なぁ?」
さとしが微笑みながら俺のお腹を撫でる。
「ふふっ…ありがとねさと」
智「でも…忙しくなるなぁ…だから今の内に」
お腹を撫でながらさとしが顔を近付けて来る。
「ばーか…」
さとしの首に手を回しながら俺は目を閉じた。