第69章 Essential
綾香ちゃんの出産から数日後。
俺と潤は事務所に居た。
目の前には渋い顔をしたジュリーさんが居る。
ジュリー「………全く。貴方達にはとことん振り回されるわね」
潤「………すみません」
潤と一緒に俺も頭を下げる。
チーフ「………いつ入籍するか決めてるのか」
潤「………出来たら…10月19日。結婚記念日に」
チーフ「そう。分かった」
「………いいんですか?」
あっさりとしたチーフの反応に俺と潤は顔を見合わせた。
チーフ「そうなるだろうと副社長と話をしていた所だ。また一緒になるのは問題ない。ただ…」
潤「はい」
チーフ「お前達が話してたあの週刊誌の記者。まだしつこく嗅ぎ回ってるみたいだから気を付けろよ。もしかしたらまた何かやらかしてくるかもしれない。潤と井上真央との事。それに翔」
「え…」
チーフ「………斗真と何かあったのか」
「………」
チーフの鋭い眼光に言葉が出なくなる。
どうして…斗真の名前が…。
チーフ「あいつ斗真の事も嗅ぎ回ってるみたいだ。それに…あいつがずっとお前の事好きなのは見てて分かる。お前と斗真に何かあったなら…もし何かあった時に対処しなきゃならない。斗真にもな」
「………それは…」
俺と斗真の間にあった事を…どう話せばいいのか。
その時、隣の潤の手が俺の手をしっかりと握り締める。
潤「チーフすみません。言えません」
チーフ「言えない?」
潤「少なくとも今は。簡単に言葉に出来ない」
チーフ「………全く」
チーフが溜め息を付きながらドカッと椅子に腰掛けた。