第66章 恋の行方 PART 1
旬「頼ったって…翔くんがお前を?」
「………」
旬「何で…」
斗真「聞かなかった。翔くんが頼ってきたそれだけで俺は…嬉しかった。あんな翔くん見たら…」
「斗真」
斗真「うん」
「翔はあの日俺と逢う予定だったんだ。楽しみにしてた。『じゃあ後で』って別れて…でも翔は来なかった。俺に電話一本で別れを告げて」
斗真「電話で…?」
「『もう俺を選ばないで』…『彼女を選んであげて』そう言ったんだ」
斗真「彼女って…真央?」
「うん。俺達やり直せると思ってたんだ。でも…ここに来てお前と…」
斗真「………」
「翔に何があったんだ?」
斗真「分からない。でも…ここに来た翔くんは…本当に…全身ずぶ濡れで…泣いてた…」
「仕事終わりに?マネージャー何してたんだ」
斗真「多分…1人で歩いて来たんだと思う。酷く傷付いてた。ボロボロって感じで…」
旬「ボロボロ…」
斗真「『忘れたい』って…『忘れさせて』って…あんな状態でそんな事言われたら…放ってなんておけない。俺に気持ちなんて無くても翔くんが望むなら…当て馬でもいい。そう思った。だから…抱いた」
「………」
旬「潤」
ふらつく俺を旬が支えてくれた。
どこかで思ってた。
半ば強引に斗真が抱いたのかもしれないって。
何かに傷付いた翔の心に付け込んだって。
でも…翔は自ら飛び込んだ。
斗真の腕の中に。
望んで…抱かれた。
怒りよりも…悲しみの感情に押し潰されそうだった。