第65章 答え
ー翔sideー
「はぁ…」
眠れない。
何度目かの寝返りを打ちながら大きな溜め息を付く。
「一緒に暮らすって…」
また、ここで…?
潤と太陽と…。
夫婦の時と変わらない様に?
横に視線を移し、スヤスヤと寝息を立てる太陽の寝顔を見つめる。
「天使…」
そっと頬を手の甲で撫でるとむず痒そうに向こうを向いてしまった。
太陽の事1番に考えようと言った潤の言葉は正しい。
でも…。
潤の忘れなきゃいけないのに。
このまま同居生活を続けたら…俺は確実に潤の事を忘れられない。
きっと潤は…彼女とやり直す。
少なくとも彼女は…俺達の離婚を知ったら何らかのアクションは起こす筈なんだ。
それを俺は…止める事が出来ない。
止めちゃいけないんだ。
それを願って離婚を望んだんだから。
彼女とそうなったら…どうする?
望んだ結果になったら。
俺は耐えられるだろうか。
この家で潤と暮らす事に。
きっとそうなったら…いくら太陽が望んでも一緒には暮らせなくなる。
そうなるとまた太陽が傷付くんだ。
自信がない。
枕元に置いたスマホを取り出す。
「にの…」
にのの連絡先を出してぼんやりと見つめる。
もう夜中だから起きてる筈はない。
もしそうでなかったとしても…にのは電話に出てはくれないだろう。
いつも笑顔で相談に乗ってくれたにの。
背中を押してくれた。
叱ってもくれた。
俺が酷い事言って壊してしまった。
「にの…ごめんね…」
スマホを握り締めながら俺は画面を閉じた。