第65章 答え
「捕まえた!」
漸く捕まえた腕をにのは離そうとブンブン振り回す。
和「何」
「ちゃんと話そう」
和「今まで話してくれなかったのは翔さんじゃん。何なのよ離婚届提出したって。いつの間に書いたの」
「………先週」
和「どうしてそんな大事な事…!」
「………ごめん」
和「いいよもう別に。俺は翔さんにとってその程度の人間だったって事でしょ」
「違う。そんな事無い」
和「じゃあ何で言ってくれなかったの。前向きにやってくって言ったじゃん。どうして?何でそんなに一気に気持ちが変わるの」
「………」
和「相談して欲しかった。何でも言って欲しかった。言ってくれてると思ってた」
にのの言葉が深く刺さる。
和「親友だって思ってたのは…俺の勘違いだったんだね…」
「勘違いなんかじゃないよ。にの…」
にのは知らないんだ。
だから…何も言わなかった俺が悪い。
でもそんなにのの言葉が俺にどんどん深く突き刺さる。
「お願い…そんな言い方しないで」
和「俺が悪いの?」
「にの…違う」
和「じゃあ何で何も…」
「旦那に浮気された事もないにのに言っても仕方ないだろ!!」
思わず出たのはそんな酷い言葉だった。
和「………そう。それが翔さんの本音なんだね」
「ち、が…」
そんな事思ってないのに。
和「ごめんね分かりもしない癖に酷い事言って。浮気された翔さんの苦しみは分からないかもしれない。でもね…分からなくても俺は寄り添いたかった。俺は自分が辛い時翔さんがいつもそうしてくれたから…同じ様にしたかった。それだけだったんだよ」
鼻を啜りながら俺から顔を背けるにの。
「にの…ごめん俺…」
和「もう何も言わないよ。ごめんね。じゃあ後で」
俺の手を振り払い、にのはその場を去ってしまった。
俺は何て事をしてしまったんだろう。
後悔しても…にのはもう戻って来なかった。