第65章 答え
テーブルを挟んで向かい合う俺と潤。
どちらも手を付けようとしないコーヒーから出る湯気を…沈黙のまま、黙って見つめていた。
何から話せばいいのか。
どう話せばいいのか。
暫くの沈黙の後、漸く潤がコーヒーを口にした。
潤「………ちょっと冷めちゃったな…」
その言葉に少しだけ笑い、頷く。
数口飲んだ後、カップをテーブルに戻し潤が俺を見つめる。
潤「………ずっと聞きたかった事があるんだ」
「何?」
潤「あの日…俺に電話を掛けてきたあの日。翔言ってたよね。『彼女を選んで』って…『もう俺を選ばないで』って」
「………」
潤「………あれは…どういう意味?」
「………俺は…ずっと…幸せだった。潤と居れて幸せだったよ。でも…これ以上…彼女を踏みつけてまで…幸せになれないんだ。彼女は…まだずっと潤を愛してる。だから…」
潤「真央を選べって?」
「………俺が彼女から奪ってなければ…今潤の隣に居るのは…井上さんだった。俺が壊したから…」
潤「俺が結婚したいと思ったのは翔だけだ」
「それは潤が俺を選んだからだよ。きっと彼女は…」
潤「翔が俺に別れたいって言った理由はそれ?斗真と寝た理由はそれなの?」
「………」
潤「俺だって真央に申し訳無い事したと思ってる。でもそれでも…俺は翔と一緒に居たいと思ったんだよ。あの時翔言ったよな。『戻って来て』って。俺は即答出来なかった。でも考えて考えて…真央を傷付けてでも翔と一緒に居たいって思ったからまたやり直した。それがあって今があるんだ。太陽授かって…結婚した。翔を愛してる。翔も同じ思いじゃないの?真央を傷付けても俺とやり直したいって思ったから言ってくれたんじゃないの?今更そんな事言うのかよ?」
「勝手だって分かってる。でも…俺には…もう…」
潤「………」
「こんな気持ちのまま潤と…一緒にやっていけない…」
潤「ふざけんなよ…」
潤が小さい声で呟いた。