第17章 ♠幻覚が・・・
智side
待つこと数分。
カラカラと白い扉が開いた。
『大野さ〜ん、どうぞ〜』
明るく自分を呼ぶ声に、俺の心臓は大きく跳ね上がる。
俺は和の手をギュッと握った。
和もそれに応えてくれる。
『…付き添いの方もどうぞ…』
さっきとは打って変わって冷た〜い声。
「行くぞ、智!」
和が俺の手を引いて立ち上がった。
手を引かれながら、ダル重い身体を引き摺るように、白い扉の向こう側へ足を踏み入れた。
小さな丸い椅子に座らされ、イジワルなアイツの顔を見た…いや、睨みつけた。
『…陽性ですね』
銀縁の眼鏡を指でクイッとする。
「で、どっちなんですか?」
まるで“お腹の子は男のコですか、それとも女の子ですか?”みたいな口調だぞ、和也。
『あー、それはですねぇ…』
ゴクリ…
俺達は身を乗り出し、息を飲んだ。
『A型ですね。ま、一週間ぐらいは外出をさけて、自宅で安静にしててくださいね』
はぁ…、やっぱり…
どうやら俺は“インフルエンザ“ってヤツにかかったらしい。