第12章 ♣あの娘が・・・
それから毎日、同じ時間に書店に通った。
智子ちゃんに会いたくて…
そして今日こそ声をかけよう…
そう思って立ち寄った書店。
いつもと同じ棚で、やっぱり漫画雑誌を読みふける君。
偶然を装うつもりで隣に立った俺に、君は気づいたんだ。
声をかけようとしたら、君が凄い勢いで走り去ってしまった。
空振りした想いをそのままにもしておけず、俺は意を決して店の門を潜った。
相変わらずピンクの店内を見渡すけど、君の姿はどこにもない。
そんな筈はない…
俺は抹茶プリンをオーダーし、智子ちゃんを指名した。
程なくして抹茶プリンを運んで来たのは、智子ちゃんだった。
智子ちゃんは指名したのが俺だと分かると、なんとも抜の悪そうな顔をした。
「座ったら?」
って促してみると、抹茶プリンをガタガタ揺らしながらテーブルに置いた。
その時プリンの上にあったサクランボが、ポロッと落ちてしまった。
「あっ…」
と小さな声が聞こえたと思ったら、智子ちゃんはスカートの裾を掴んで、俯いてしまった。
今にも泣き出しそうな顔で…