第12章 ♣あの娘が・・・
翔side
一週間ほど前の事、和子ちゃんからの伝言だと言って長瀬くんから、智子ちゃんが俺のことが気になってるらしいと聞かされた。
何気に喜んでる俺だったけど、翌々考えたら相手は客商売だ。
客寄せの為ならあの手この手で言い寄ってくるのは、良くあること。
それでも智子ちゃんにもう一度会いたくって、店の近くまで行ったんだ。
でも一人で店に入る勇気はなくて、結局近くの書店で立ち読みを決め込んでいた。
その時だった。
俺の隣で漫画雑誌に食い入る、俺よりも少しだけ小柄な青年。
垂れ気味の目に、ポッテリした頬、プックリした赤い唇。
見覚えのある顔だった。
彼は店員に立ち読みを咎められると、フニャッと照れくさそうに笑った。
智子ちゃんだ。
間違いない。
俺の疑念は確信に変わった。