第12章 ♣あの娘が・・・
どれだけキッチリメイクをしても、泣き腫らした瞼は隠せなくって…
「こりゃ無理だわ…。今日は休む?」
鏡の中の俺に問いかける和。
俺は黙って首を横に振る。
はぁ、と一つ息を吐くと、和は俺の頭にウィッグを被せた。
「頑張れる?」
「…うん」
鏡に写った俺は、“智“ではなく“智子ちゃん“の顔をしていた。
とは言え、そう簡単に気持ちが切り替えられる訳もなく、俺は店の片隅でボーっとしていた。
時折和が寄ってきては、唇の動きだけで“頑張れ”って言ってくれるから、その度に俺は黙って頷いて見せた。
その時だった。
「智子ちゃん、2番コタツご指名よ♪」
って、雅子ちゃんに肩をポンッと叩かれた。
「えっ? あ、はい…」
そして、
「これ持ってってね〜」
って潤子ちゃんに渡されたのは、お盆に乗った抹茶プリンだった。