第5章 旧い夢 【悪い夢 side S】
ひとしきり泣いて落ち着いたのか
智くんが動いた。
涙で潤んだ瞳で俺を見る。
O:「翔ちゃん…」
「ん?どうした?」
O:「翔ちゃん、ありがとう。
ごめんね、心配かけて」
「どういたしまして。
別に謝らなくていいよ。
俺が勝手に心配してるだけだからさ。
ってかね、いつも心配だよ。
だって智くんの事が大事だからね。
心配ってね、相手の事を想ってないと
しないものなんだよ」
そういいながらさらさらの髪を撫でる。
その心地よさにしばらく浸る。
O:「おいらも…翔ちゃんのこと心配だよ。
優しすぎるから…。
おいらのこと…重くない?
いつまでもズルズル引きずってて…」
「そんな簡単にはさ、
忘れられないと思うよ。
俺らですら今でも時々思い出すんだよ。
あの時、苦しんでる智くんのことを
少しもわかってあげられなくて…。
自分の無力感とかさ、
もうすこしで俺たちは大事なモノを
失ないそうになったっていう…
恐怖に似た気持ちがあるから。
智くんほどじゃないけど…
思い出すよ。
その度に智くんがいるのを
確かめずにいられないんだよ」
そう言って智くんをみる。
「だからさ、頼ってよ。甘えてよ。
心配させてよ。
俺に感じさせてよ、
智くんがここにいることを。
俺が智くんの力に、
支えになれてることを…」
智くんが俺をみつめる。
無言で俺の唇に智くんが唇を重ねた。
〈次章に続く〉