第16章 Don't be discouraged!
松本side
俺から仕掛けたはずだった。
今の自分を守るため、
弱い自分を隠して皆の仲間で居続けるため
誤魔化し続けるには多分一番難しい
相手を前に俺から仕掛けた。
何を聞かれても「なんにもない」と強気で
突き通せば、和は諦めのため息と共に
その追求の手を収めると思った。
これはよくあることで…。
お互いがお互いに大事だから
引くときには引くのが俺たちのやり方。
だから今回もそうなるはずだった。
なのに…。
和の一言が流れを変えた。
N:「デパス」
不意の一言に思わず息を飲んだ。
「なんで…知ってるの…?」
声が震える。
知られちゃいけないもの…。
リーダーの件以降、
俺たちは薬に敏感になっている。
体調不良も仕事に影響が出るから
隠すのはNG。
それでも軽い風邪とかなら
寝れば治るなんて黙って
やり過ごすこともあるけど…。
それでさえバレたら治ってから
ベナルティがあるから…。
体調に関する情報を隠すのは
絶対ダメなんだ…。
そんなのわかってる。
でも…自分の弱さのせいで
皆を心配させたくない…。
だから隠し続けなくちゃいけなかった…。
N:「ソファーに投げてたバッグ。
あれから…出てた。
あと、オーディオのところに…」
和は1度目を瞑り…目を開く。
その目には強い光が宿っている。
俺は何も言えなくて…。
ただ、俯いて
床のフローリングを見つめる。
頭のなかでひたすら言い訳を考えた。