第14章 Dear my doctor
櫻井side
雅紀の唇が送る熱にいつのまにか煽られて最初は逃げていたのに今は求めるように舌を絡ませる。
飲み込みきれない唾液が口角から顎へと落ちる。
肌をなぞるように落ちる液体の感覚。
僅かに感じる不快感を忘れさせる舌の感触。
その感触に酔う。
雅紀の手は時々、まるで偶然のように俺の胸を擽るけど…それ以上の刺激はない。
キスだけで高まる熱。
でもそれだけじゃ…全然足りない。
足りないのに…雅紀はくれない…。
A:「翔ちゃん?
黙ってたらなにもわからないよ?
どうしたい?どうしてほしい?」
熱を持つ唇を指で撫で、笑みを浮かべ優しく聞く雅紀。
それでも素直になれない俺に雅紀はキスだけを寄越す。
欲しいのは別のものなのに…。
いじわる!と言いたくなるほどなにもくれない。
「っん、雅…紀…っふ」
キスだけで吐息が漏れる。
自分の声に含まれる甘さに赤面する。
A:「ん?どうしたの?翔ちゃん?
顔、赤いよ?」
もどかしくてどうしようもなくて…。
気づいてほしくて…雅紀の服のボタンを外そうとした。
伸ばした手の目的が分かったのか雅紀の手が伸び俺の手を止める。
A:「翔ちゃん?この手、なに?
言ったよね?ちゃんと口にして。
声を聴かせてよ?
約束は守るよ?言ったことは叶えてあげる」
瞳に宿す光はさっきと変わらないのにでも優しさが見える気がする。
そしてその影にみえる雅紀に似合わないサディスティックな光は俺の見間違え?
分からない。
わからないけど…躰が求めるままに…衝動に身を委ねてしまいたいと思い始めていた。