第12章 tie me up… tie you down…
櫻井side
なのに…次の瞬間、その光が揺らぐ。
O:「でも…翔ちゃんだけは離したくない。
離れたくないよ…。
それでも…それでも…もし
翔ちゃんの心がおいらから離れて
ほかに愛する人が出来たら…。
おいら…翔ちゃんのこと…」
綺麗な瞳から涙が一筋落ちる。
映画かなんかのワンシーンの様に
美しい光景。
その光景と裏腹に智くんの口からは
考えてもいない言葉が出た。
O:「殺して一緒に死ぬから…」
「智…」
名前を呼ぶしか出来ない俺に
智くんは固い意志をもった瞳を
向けたままで続ける。
O:「みんなに
迷惑をかけるかもしれないけど…
出来るだけ迷惑かけない方法、
考えるから…
一緒に逝って…」
体を震わせて全身から吐き出すように
言葉を紡ぐ智くん。
そのままにしたら消えてしまいそうで…
つなぎ止めるように抱きしめる。
俺の肩に顔を埋める智くんが
俺の覚悟を試すように呟く。
O:「引き返すなら…今だよ」
俺は抱きしめる腕に力を籠める。
「智…言ったよね?
絶対に離さないって…何があっても
世界を敵に回しても離さないって…
言ったよね?」
肩の辺りから嗚咽が聞こえる。
「あれ、マジだよ。
俺、離す気ないよ。
誰にも譲る気もないし…。
世間にばれてヤバくなったらさ
海外にでも逃げようよ?
別に狭い日本に
こだわらなくていいじゃん?
そりゃさ、家族のこととか
考えないわけじゃないけど…。
もしもの時は全部捨てて
2人で南の島でも行って
そこで生きよう?
大丈夫だよ、こんなに広い世の中だよ?
どっかに2人で
幸せに暮らせる場所はあるよ。
いっそ5人で消えようか?
それも悪くないかも?
みんなで幸せになろう。
その幸せはもちろん智の幸せも
含まれるんだからな…
幸せに生きていこうよ」
そう言って智くんの髪の毛を指で梳く。
嗚咽が収まるまでずっと…。