第12章 tie me up… tie you down…
大野side
「あの当時にね…
なんて言ってたかな?
確か奴ら、催淫剤だか媚薬だかなんだか
言ってた気がする…。
それを使われたことがあるの…」
翔ちゃんが息をのむのがわかる。
「あれね…半端なくきつくて…
自分の意志なんて全部吹っ飛ぶの。
コントロールが利かなくなる」
青ざめる翔ちゃんの顔。
「でもね…今日飲んだのは…
そんな毒が全くなかった。
別に最初から
気がついてたわけじゃないよ?
翔ちゃんが媚薬なんていうからさ…
マジで信じちゃったし」
翔ちゃんの肩が震えてた。
手にしてたグラスのシャンパンを飲みながら
更に言葉をつなぐ。
「翔ちゃんが媚薬の凶悪さを
知ってるかはわからなかったけどね。
仮に知ってたとして…
それでもそんなものを使うところまで
追いつめたのはおいらだと思ったの。
だから飲んだ」
S:「智くん…ごめん…俺…
知らなかったからって…。
許されることじゃないことを…
しようとしてたんだね?」
翔ちゃんの言葉に涙が混じる。
グラスをベッドサイドに戻して
翔ちゃんの肩に凭れ掛かる。
「翔ちゃん…聞いて…
自分を責めないで。
ごめんね、おいらの勇気が無くって
言葉でちゃんと伝えずに
翔ちゃんに甘えてた。
翔ちゃん…。
翔ちゃんがくれるものならね…
それが例え毒でもなんでも全部…
貰うから…」
自分の膝の上で拳を作る翔ちゃんの手に
自分の手を重ねる。
「でもね…別れの言葉だけはいらない。
それは受け取れない。
おいらね…
翔ちゃんがイヤだっていっても
離れないよ」
翔ちゃんが顔を上げる。
ようやく顔を上げてくれた翔ちゃんの
目を見て続ける。
滅多に泣かない翔ちゃんの瞳が
涙で濡れてた。