第11章 Sweet remedy
櫻井side
移動したオーディオルームで飲み直す。
「智くん、今日はイロイロお疲れさま。
ほんと、大変だったね…」
O:「雅紀は繊細だからね。
あの現場はキツかったかもね。
途中、モニターみたら
顔、引きつってたし…」
M:「そんなに凄かったの?その現場」
O:「うん。正直ひどいね、あれは。
下手したらお蔵入りで
撮り直しじゃないかな?
事務所が許さない気がする
マネージャーもかなり
顔色やばかったから」
「あとで確認した方がいいね、それ」
M:「つぅか今度、俺が行く?
番宣って俺らのやつでしょ?」
O:「ダメだって!
こういうキャスティングって
決まってるのを変えるわけに
いかないでしょ?
それにさ、雅紀も乗りこえないと…。
ね?」
潤に念押しするように言う智くん。
この人は…ボーッとしてるように
見られてるのに誰よりも俺らのことを
考えてくれてるんだよな…。
「まぁ、ここは智くんの意見に従った方が
いいと思うよ。
で、コンサートの打ち合わせ
どうだったの?」
話題を替える。
コンサート隊長から次のツアーの話。
潤も切り替えたみたい。
あっちは和に任せとけばいいし…。
そんなことを考えてると…
智くんと目が合った。
『ありがとう』
そう言う智くんの瞳。
『いえいえどういたしまして』
伝わったかな?
智くんのフニャッとした笑顔を見て思う。
きっと伝わったね。