第8章 マリーゴールド
Jun side
ちょうど家について
潤「…はぁ……」
溜め込んだ不安を吐き出すように
深く息を吐いて座り込んだ時
握りしめていた携帯が震えた
慌てて画面を確認すれば
そこに写った“翔くん”の文字に
今度は安堵の息をつく
でも開いたメッセージは[家に居て]
どこの場所でもなく,自宅に居ろの指示に
今日はやっぱり逢えないのか…と
不安と淋しさは最高潮に達する
潤「……なんで…?」
思わず零れた声は震えていて
手から携帯が滑り落ちていく
明らかに俺を避けていた翔くん
だからきっと原因は俺にあって
だから俺に泣く権利なんてない
溢れそうな涙を堪えて唇を噛み締めて
床に転がった携帯を手に取って
返信しなきゃ…と画面を見つめる
でも,わかった,とは言いたくなくて
指が動かない
どれくらいそうしていたか
家の中にチャイムの音が鳴り響いた
誰だかわからないけど出る気になれなくて
居留守を決め込んだのに
チャイムは2回…3回…と鳴り続ける
仕方なく立ち上がって
潤「…はい」
応答すると
翔『あ…櫻井,です』
画面に映った翔くんの顔と
耳から聞こえる翔くんの声
潤「えっ…翔,くん…!?」
まさかの訪問者にびっくりして
返答もきかず慌てて解錠して
涙が溜まった目元を拭って
笑顔を作って玄関に向かった