第58章 ストック
Sho side
ニノに潤の様子を見に行ってもらうと床の上で寝ていたみたいで
このままでは風邪をひくから
なんとか抱き上げて
寝室に運んだ
…俺が運んだって知ったら…
また…嫌がるかもしれない…
起こさないように気を付けながら
コートに包まれた潤の躰をそのまま
ベッドの上に降ろした
和「…でも…離れても解決しないんじゃない…?」
もう一度ソファに座ると
ニノが俺を見る
わかってる…辛いから…逃げたいだけなんだ…
翔「でも…潤が怖がってるし…」
和「そこ…ですよね……変じゃない…?記憶が抜け落ちて10代に戻っただけなら,怖がるはずないでしょ…?だって…ずっと翔くんのことを大好きだったんだから…潤くんは…」
翔「それは…先輩として…だろ?」
和「違うって…ジュニアの頃から,潤くんは翔くんのことしか見てなかったよ?」
ニノは自信満々に言い放った
和「他に…何か原因がある…?」
翔「他に…?」
和「…いや…勝手な推論で,なんの根拠もないけどね…」
考えても解んないや…とニノはソファに身を投げた
今日までの潤の様子を全部話しても
ニノは俺にここに残れと言う
和「辛いなら,俺もここに泊まってもいいよ?…でも,翔くんが居なきゃ…潤くんの記憶は戻らないよ……2人の想い出は…今,翔くんだけが持ってるんだから…」
想い出を守る…と決めたのに…
潤に一度拒否されただけで
俺の決心はあっさりと揺らいでいた
潤が居てくれればそれでいい…
そんな風に簡単に割り切れない…
翔「でも…潤が嫌がるよ…」
机の上に無造作に置かれていた潤の指輪を
俺は握りしめてチェーンに通した
俺たちの積み上げてきたものは
こんなに脆いものだったのかな…
このまま…記憶が戻らなければ…
あっさり無かったことになるくらい…
儚いものだったんだな…
呟くように吐き出す弱音を
ニノはずっと傍で聞いていてくれた