第58章 ストック
Sho side
ソファに座って目を閉じる潤に
ブランケットを掛けた
潤が気に入ってた
肌触りのイイ俺のブランケット…
無意識かもしれないけど
いつものように
その端をきゅっと握ってくれて
それだけで嬉しかった
コーヒー豆の位置を
潤は覚えてた…
頭では忘れてても
きっと感覚で覚えてることや
思い出すこともあるかもしれない…
‟日常生活の中で思い出す可能性がある”
信憑性の薄かった医者の言葉が
少しだけ信じられるような気がした
潤は記憶がなくなってることを説明されても
いまいち実感していないみたいだった
でも嵐の事は覚えてるし
メンバーの事も
事務所スタッフのことも覚えていた
2年前からついたマネージャーの事は
説明されると…なんとなく思い出したみたいに仕事の話しを始めた
…可能性はある…
焦らず少しずつ
取り戻していくしかない
不意にポケットの中で携帯が振動する
潤を起こさないように寝室に移動してから電話に出た
翔「はい…」
『お疲れさまです…どうですか…?』
潤のマネージャーが泣きそうな声を出す
翔「やっぱ疲れるみたいで…今寝てる…明日の朝,一度事務所に連れて行くから…俺も今日の分の仕事…明日入ってるからさ…一人にできないし…」
『わかりました…今年のツアーの資料…見せても大丈夫ですかね?』
翔「…むしろいいかもしれない…仕事の事の方が…思い出しやすいかも…」
『わかりました…じゃぁ…様子見ながら…』
翔「ん…よろしく…」
携帯を切ってから
ベッドに深く腰掛けた
リオで取材してきたものを
明日には放送しなきゃいけない…
今日できなかった打ち合わせを
メールで送らなきゃいけない…
やらなきゃいけないことはたくさんあるのに
躰が動かない
潤の身に着けていた私物として預かった物の中に2本のネックレスがあった
事故にあったのに
チェーンもトップも指輪も
殆ど傷なんかついてなかった
潤が戻ってくるまで
今度は俺がちゃんと想い出を守らなきゃ…
それを2本とも
自分の首にさげた