第58章 ストック
Sho side
翔「記憶障害…?」
智くんの口から似合わない言葉が出た
翔「何言ってんの…?」
日本語の意味,わかってる…?
「一過性のものかもしれませんが,おそらく…一定期間の記憶があいまいになっている様ですね…」
隣に立つ白衣の医者が
わかったような口を利く
翔「潤は…頭を打ったんですか?」
「外傷はありません…ただ…事故の衝撃で,脳が揺さぶられて…記憶を司る器官に何らかの影響が出ているものと思います」
なんだそれ…
なんで…頭打ってもいないのに…
記憶がなくなるんだよ…
智「たぶんね…松潤は…今10代だと思ってるよ…」
翔「10代??」
智「嵐としてデビューして…これから頑張らなきゃいけない時に…って言ってたから…」
…ますますわけがわからない…
翔「…たしかめてくる…」
智「ちょっ…ダメだって…」
部屋に戻ろうとする俺を
智くんが立ちふさがって止めた
智「もう少し…落ち着いてからにしよ…?」
もう少し…って…?
何?
なんで?
翔「いつ…落ち着くんだよ…」
俺が睨むと
智くんは眉をさげて困った顔をする
でも,決してそこを通してはくれなかった
「記憶は…生活と共にもとに戻っていく可能性が高いです…保証はできませんが…そういう症例を何度も見たことがあります」
智「今はさ…松潤も事故の衝撃で混乱してるんだよ…だから…ゆっくり…元通りの松潤に戻していこう?…みんなで…ね?」
智くんが優しく笑った
潤は何を覚えていて…何を忘れてるの…?
俺との想い出は…?
潤の中には…何も残ってないの…?
こんなドラマみたいなことって
現実に起こるの?
何で…?
俺がリオに行ってる間に…
世界が変わってしまったみたいに見える…
俺…どこに帰ってきたんだろう…