第51章 カーフ
Masahiro side
頬を染めた雅紀が可愛くて
再び顔に手を伸ばそうとすると
雅紀の躰がビクッと揺れた
まぁ…そーだよなぁ…
触ろうとした手を引っ込めて
自分も向かい側に座ろうとした時
部屋の電話が鳴った
昌「延長する?」
電話に出る前に聞いても
雅紀は何も答えなかった
昌「延長はいいです,はい…あと10分ね…?」
確認して電話を切った
そう言えば最後に入れた花唄…
歌わなかったな
でも…もう雅紀はそんな雰囲気じゃないし
やばいなぁ…
さすがに…キスはやりすぎたか…
昌「出るから,支度しろよ?」
俺の言葉に弾かれたように動き出す
ジュニアの頃からしみついた習慣だから
俺の言葉に対する反応は早い…
脱ぎ捨ててあった上着を羽織って
鞄を前にギュッと持った
俺の後ろをついて来て
会計の時もずっとその恰好のまま
変装もせずに立っていた
助手席のドアを開けると
そのまま車に乗り込んだ
これもいつも通り…
でもいつもなら
一人で3人分くらい喋ったりもするのに
黙ったまま…
昌「…今日は…実家…?」
エンジンをかける前に雅紀を見ると
雅紀もジッとこっちを見ていた
疑うような
答えを求める様な
訴える様な視線
あー…
ったく…俺…やっぱ早まったなぁ…
つーか…順番間違えたか…
昌「…悪かったよ…」
仕方なく謝って視線を外した
どーしたら…元通りの関係に戻れるか
そればかり考えてると
消え入りそうな
震える声が俺の耳に届いた
雅「…な…んで…?」
振り向くと
潤んだ瞳が俺を見ていた