第49章 カカオフィズ
Ken side
初めて入る斗真の家
緊張するかと思ったのに
部屋に足を踏み入れると
そこは斗真と同じ雰囲気が漂っていて
健「斗真の匂いがする…」
斗「え?…臭いですか?」
健「なんでだよっ」
妙に安心して
自分の家のように
リラックスしてしまう
斗「何か飲みます?」
ソファに座り込む俺の周りを
何度か往復しながら斗真が聞いてくる
健「いーから…座れよ」
自分の隣を叩いて斗真を促した
健「俺に気を使わなくていーの」
斗「…はい…」
健「はい,じゃなくてっ…敬語もなしっ」
斗「そ…それは無理ですよっ」
慌てて首を振る
斗「だって…健くん先輩だし…」
健「もう先輩じゃないだろ?」
斗真の袖をきゅっと握って
首を傾げて顔を覗き込んだ
斗真は視線を逸らして
困ったような笑顔で頷いた
斗「でも…敬語は…許してください…」
健「やだ~!!」
斗「いきなりは無理ですって…それに…皆の前では敬語じゃなきゃいけないし…」
もぉ…これだから真面目な奴はっ…
健「…じゃぁ…健って呼んで?」
斗「健…くん…」
健「くん,はいらないのっ」
斗「それも無理ですってば~…」
泣きそうな顔を俺の肩に埋めて
ギュッと俺の躰を抱き寄せた
斗「それは…少し…時間をください…」
小さな声で呟いた
健「しょーがねーなぁ…」
その頭をギュッと抱き寄せて
ポンポンと叩いた
健「今は斗真が居てくれるだけでいーや…」
俺も呟くように言うと
俺を抱き寄せる腕に力が籠った