第49章 カカオフィズ
Toma side
いつも強気で
坂本くんのことに関しては張り合ってきた健くんが
弱音を吐いて…
瞳からは綺麗な涙を零した…
その頭を胸元に抱き寄せると
シャツが少し濡れる感覚がした
斗「見込みなんて…俺だってないですよ…」
さらさらの髪の毛に指先を通して
梳くようにすると
健「それでも…斗真は…まだ頑張るの?」
胸元に埋まっていた顔が動いて
目尻を赤くして潤んだ瞳が俺を見上げた
その瞳と視線が絡んだ途端に…
ドクン…と心臓が跳ねた…
…かわいい…
涙を浮かべて…
胸元に顔があるから
抱きつかれているようで…
顔が熱くなっていくのが…わかる
坂本くんにもこんな感覚になったことはなくて…
これは…お酒のせい…?
健「斗真?聞いてる?」
気づいたら健くんを見下ろしたまま
時間が経っていたみたいで…
健くんの声ではっとした
斗「あ…ごめんなさい…何でしたっけ…」
ドキドキと心臓が鳴っているのがわかって
それをバレないように
さり気なく躰を少し離した
健「てかお前顔赤いよ?酔った?」
離したのに…
健くんの手のひらが顔に伸びてきて…
それが頬に触れた瞬間
ピク…と躰が動いた
斗「ちょっと…酔ったかもしれないです…」
ほんとはアルコールなんかどこかに飛んだんじゃないかってくらいだけど…
なんだかわからないこの気持ちから逃げるように
テーブルの上の氷の溶けたカクテルを流し込んだ