第49章 カカオフィズ
Toma side
「映画観に行くね」とか
「撮影頑張ってね」とか
顔見知りのスタッフさんやら俳優さんからかけられる声に
お礼を言って楽屋に戻ってくると
カバンの中の携帯がチカチカと光っていた
メールをチェックすると
[終わったー]
それだけが健くんから入っていた
多分…何も他の言葉がないのは
坂本くんは誘えなかったってこと…
[お疲れ様です
終わりましたよ]
でも…
この気持ちを話せる唯一の相手に聞いてほしいから
そして
同じ気持ちを抱えてる人のつらさを聞いてあげたいから
そう返信してから
すぐに返ってきたメールの指定された場所にタクシーで向かった
斗「お疲れ様です」
居酒屋の個室のドアを開けて中に入ると
健「お疲れー
斗真おせーよっ」
予想通り健くんが一人で俺を迎えてくれた
立ってる俺を見上げる形の健くん…
その上目遣いが可愛く見えて…
なぜか少し心拍数があがった気がした…
斗「すいません
って俺も急いだんですよ?」
向かいに腰をおろしながら
その感覚を追い出すように声を出した
健「ま,いいや
乾杯しようぜっ,二人だけど」
健くんが笑いながら
メニューを差出してくるから
それを受け取って
斗「ビールでいいですか?つまみは?」
健くんに希望を聞いて
いくつかつまみを頼んで
控えめにグラスのぶつかる音を響かせた