第46章 ヒヤシンス
Sho side
夜通し車を走らせて
気づけば外は明るくなっていた
どこをどういうルートで走っていたのかなんて何も思い出せない
鳴りやんでいた携帯が
再び振動する音で我に返り
車を路肩に停めた
ディスプレイを覗くと
マネージャーで
あ…仕事…
慌てて電話に出た
「櫻井さん今どこですか!?」
今…?
どこだろうココ…
あたりを見回すとどこかの住宅街で電信柱に「一之江」と書かれていた
翔「あ…東京だ…江戸川区にいる…」
「良かった…それなら間に合いますね…自分で迎えますか?」
マネージャーに謝って車を発進させた
思ったより遠くに来てなくてよかった…
それに今日は取材で千葉に行くから
方面的にも問題ない
かき集めた荷物の中にも
取材に必要な物がしっかり入っていて,思わず苦笑した
頭の中が真っ白になってたと思ったけど
思ったより冷静なのかもしれない
12年間で特殊な関係もしみついていたけど
16年…いや…20年間で
この特殊な仕事もしっかり板についていたから…
しっかりしてるな…俺…
はー…と深く長い息を吐いた
胃がぐっと押しあがってくるのを
生唾を飲み込んで耐えた
…嵐を辞めない限り
潤とは会える
むしろずっと傍に居なきゃいけない
でも…愛する人の幸せを
目の前で見守ることができるんだ…
それでいい…
それで…
ギリっと唇に痛みが走って
鉄の味がした
サイドミラーで確認すると
唇が切れて血が出ていた
それを舌で舐めながら
車を千葉方面へ走らせた