第46章 ヒヤシンス
Sho side
雨風が強くなっていて
でもそれが流れた涙を消してくれるから構わず歩いた
顔を上げると俺をエスコートするようにタクシーが止まってて
空車を確認して乗り込んだ
行き先を告げた頃
潤が追いかけて来てることに気づいた
何か聞こえたけど
雨の音にかき消され
タクシーはそのまま潤の傍を離れた
タクシーの窓に雨が叩きつけられてる
潤…ちゃんと家に入ったかな…
この雨の中いたら風邪ひく…
薄着だったし…
わけがわからないって顔をした
潤の顔だけが目に焼き付いていた
そりゃそーだよな…
あんなんじゃ…わかんないよな…
でも…
あれ以上言えなかった
「別れよう」とか「さよなら」とか
そんな言葉…俺には言えない…
12年…
あっという間だったけど…
長すぎたんだ
なんの未来の保証もないのに
ただ俺の傍に居てくれなんて
都合がよすぎる…
人に言われて気づくなんて…
ポケットの中で携帯が振動し続ける
でもそれに気づかないふりをした
タクシーを降りて
家に戻って必要なものをかき集めた
濡れた服を着替えて
すぐに車で家を出た
行く当てなんてないけど…
潤が合鍵を持ってるから
今は家には居られない
今,潤の姿を見たら
せっかくついた決心が揺らぐから
ただ…止まらない涙で
服を濡らしながら
眠らない街に車を走らせた