第46章 ヒヤシンス
Jun side
お茶を拭いた布巾を片付けて
テーブルに戻ると翔くんがいなかった
潤「翔くん…?」
そう声をかけると同時に
寝室から荷物を持った翔くんが出てきて
潤「…なに,それ…」
その手にあったのは
家に置いてあった翔くんの物…
チラッと俺を見て
無言で玄関に行く翔くんの後を慌てて追いかける
潤「なんで…それ持ってんの…」
掠れる声で問いかけると
靴を履いた翔くんにふわっと抱き締められた
翔「潤…」
聞きたくない言葉が聞こえる気がして躰がカタカタと震える
翔「幸せになって…?」
ごめんな…と耳元で呟かれて
言葉の意味が理解できないでいるうちに
着ていたカーディガンのポケットに何かがいれられた
カチャ…とドアが閉まる音がして
潤「っ…翔くんっ…」
裸足にサンダルを引っ掛けて慌てて家を飛び出した
翔くんの乗ったエレベーターが閉まって…
潤「…っ」
非常階段を駆け下りる
でも…
潤「待ってよっ…」
やっと追いついたのに…
翔くんはタクシーに乗り込んで…
潤「っ,行かないで…っ!」
俺を見ることなくそのタクシーが動き出す
俺の声は翔くんには届かなかった…
ガクンと膝が崩れ落ちる…
その拍子にポケットから
さっき翔くんにいれられた…俺の家の鍵が落ちた
潤「どういうこと……?」
呆然と呟いた声は
いつの間にか横なぐりに変わっていた雨音にかき消された