第46章 ヒヤシンス
Sho side
友達の結婚を羨む潤が
不安そうな顔を俺に向けた
そして
何かを求めるように発せられた言葉
潤「翔くんは…俺といて幸せ…?」
その言葉を最後に
俺の耳から音が消えた
いつもあるはずの部屋の空調の音も
冷蔵庫のモーター音も
外を走る車の音も
何も聞こえない…
ただ目の前にいる潤の顔を
ぼやけるほどまっすぐに見つめることしかできなかった
「翔くんは…俺といて幸せ…?」
…当たり前だろ…?
俺は潤が居れば…
居てくれれば…
でも潤は…そうじゃないんだ…
潤の瞳は俺に何かを求めていて
俺は…その求めるモノを与えられない…
じゃぁ…やっぱり
俺には潤を幸せにできないんだ…
足りないんだ
ゴトン…と音が戻った
潤の手がお茶の入ったコップを倒してテーブルにお茶が零れた
潤「あ…やば…」
潤が慌ててキッチンにタオルをとりに行ってバタバタとそこを拭き始めた
俺はただその光景を見ていた
潤「ごめんね…」
テーブルを拭きながら俺に視線を向ける
その黒くてきれいな瞳が揺れていた
「もう…解放してやって…」
小栗くんの言葉が耳鳴りのように
キンと通り抜けた
俺はどんぶりに入ってる
蕎麦を汁まで全部飲み干した
俺の好きな,良い濃さのカツオ出汁
潤がキッチンに戻るのと同時に
俺は席を立った
翔「ごちそうさま…」
それだけ言って寝室に入った
クローゼットの中から
自分の必要な荷物をかき集めた
全部は無理だけど
持てるだけは持って出よう
あとは捨ててもらえばいいから…
何か考えると涙が零れそうだったから
俺は無心で荷物を詰めた