第3章 ドルフィン*Dolphin*
〈雅紀〉
雅紀がタオルを持って部屋を出ると
前から看護師の斗真が歩いてきた
雅紀が慌ててトイレに隠れようとすると
翔「あれ?…雅紀…終わったの?」
爽やかに立っている私服の翔が声をかけてきた
雅「え…あっ…翔さん…って!えぇ!?…な,何が?」
慌てふためく雅紀に
至って冷静な翔
斗「あ…ちょうどよかった…はい…これ」
さらに,後ろからやってきた斗真に
雅紀は白い紙袋を手渡された
雅「な…な……な…に?」
斗「薬…お腹痛くならないように,潤くんに飲ませな?あと塗り薬も入ってるよ」
翔「次はちゃんとしろよ?」
斗「あと…10分で見回りの時間だよ?」
呆然と立ち尽くす雅紀を残して
2人は爽やかに笑いながら帰って行った
雅「バレてた…って…10分っ!?」
雅紀は急いでタオルを濡らして
潤の病室に戻った
雅「潤ちゃんっ!!」
部屋に戻ると潤はスースーと寝息を立てて
気持ちよさそうに眠っていた
雅「寝ちゃったのか…」
雅紀は潤の躰を丁寧に拭いて
少しだけ赤くなってる蕾に貰った薬をつけて
急いで服を整えた
見回りの看護師をベッドの下に潜り込んでやり過ごしてから
もう一度ベッド際に座って潤の顔を眺めた
雅「潤ちゃん…好きだよ…」
売店で初めて会ったとき
綺麗な顔に釘付けになった
天使みたいな綺麗な可愛い笑顔で笑いかけられると
胸が高鳴ってドキドキが止まらなかった
初めて病室に忍び込んだ時
どうしても触れたくて
ふっくらした唇に吸い込まれるようにキスをした
まさか…潤が自分を求めてくれるなんて
想いもしなかった
雅「潤ちゃん…」
雅紀はさらりと顔にかかる髪を指で避けて
潤の薄く開いた唇に暖かい影を落とした
潤は眠ったまま夢の中
雅紀はそっと病室を抜け出した