第3章 ドルフィン*Dolphin*
<潤>
雅紀との会話を思い出しながら
雅紀に触れられた感触を思い出しながら
潤が一旦病室に戻ろうと歩いていると
翔「お,潤っ」
廊下の手すりを拭いていた翔と偶然出会った
潤「翔くん!お疲れ様です」
もう一人…探していた人に出会えて
潤はちょっと歩くペースをあげて翔に近づいた
翔「松葉杖,だいぶ慣れたな」
そう言って翔は潤を優しく見つめる
潤「うん…もうすぐ退院だしね」
照れ臭そうに少し頬を染めた潤に
翔「お♪そうなのか!退院祝いしような!」
翔は嬉しそうに笑った
潤「大袈裟だよー…でも,ありがとう」
例え口約束で終わってしまっても
そう言ってくれたことが嬉しくて
潤も笑って返して…
潤「あ…」
ふと,何かに気づいたように潤が固まった
翔「ん?どうかした?」
不思議そうに見つめる翔に
潤「あっ…ううん,なんでもないっ…そろそろ戻るね,仕事頑張って!」
慌てて言葉を返して潤は病室に戻る
ベッドの上に座ると一息ついて
ゆっくりといろんなことを思い返す
退院を伝えたときの
優しい笑顔の中に薄ら見えた寂しそうな瞳…
わざわざ「怪我してない?大丈夫?」と聞いてきた意味…
それから…似ていると感じるあの手…
潤「…ふふっ」
ほぼ確信を得た潤は
それと同時に自分の気持ちにも気づく
思わず緩んだ頬に手をあてて
ぎゅっとバンダナを握り締めた