第3章 ドルフィン*Dolphin*
<潤>
潤「えっと…トイレに…」
斗真の質問に答えながら潤は翔を見る
こんな時間にいるはずないと思っていた翔がそこにいて
もしかして…と思ってしまう
翔「今日はちょっとやることがあってさ…でももう帰るよ」
頭の良い翔はその視線の意味を受け取って答える
でもその答えが潤の中の“もしかして”を大きくしてしまう
潤「そう,なんだ…」
でも“俺をさっき襲いましたか?”なんて聞けるはずもなく
それだけ答えて黙り込む潤に
斗「潤くんトイレ行くんじゃないの?俺もさっきまで仕事しててさ…帰ろうと思ったら翔くんに会ったんだ」
斗真が潤をトイレに促しながら
斗「ゆっくり休んでね潤くん」
潤の横を通り過ぎようとした
その瞬間
潤「え…?」
ふわりと香った柑橘系の爽やかな香り…
それはさっきバンダナから香ったものと似ている気がした
思わず声をあげた潤に
斗「どうかした?」
斗真は不思議そうに振り返るけど
潤「あっ…なんでもない…2人とも気を付けて帰ってね」
やっぱり聞けるはずもなくて
“もしかして”が潤の中でただ増えた
潤の言葉に
斗「ありがとう」
翔「潤もお大事にな,ゆっくり寝ろよ」
口々に答えて並んで帰っていく2人
潤「あの2人って仲良かったんだ…」
その背中を見送りながら
思わず心の声が漏れた
でも…まあ…
短期間入院しているだけの潤が仲良くなれたんだから
おそらく長期間同じ院内にいる2人が仲良くても
不思議なことはなにもないか…と思い直して
トイレで手を洗ってから
潤はベッドに戻った