第3章 ドルフィン*Dolphin*
<翔>
潤「よいしょ…っと…」
散々熱の回った躰の処理を終えた潤は
起きてからいろいろありすぎた頭を少し冷やそうと
何か冷たいジュースでも買いに行こうと
松葉杖を頼りに病室のドアを開けた
翔「お,潤!散歩?」
一歩踏み出そうとした潤に
偶然向かいから歩いてきた翔が声をかけた
翔とはあれ以来院内で会えば話したりと
潤とは少し歳が離れているけど
仲良くしてもらっている
潤「あ…翔さん…あれ?仕事終わり?」
珍しく私服姿の翔を不思議に思いながら
ゆっくりと歩き始めた潤の背中に
翔の温かい手が添えられる
翔「いや,これから仕事,今日は遅番なんだ」
潤「そうなんだ,お疲れ様」
まだ時間のあるという翔は
そこから他愛ない話をしながら
自販機に付き添って
潤を病室まで送ってくれて…
潤「ありがとう」
潤がベッドに腰掛けると
翔がふと視線を落とした
翔「ついでにゴミ袋変えてくな?てか…潤風邪でも引いた?」
翔が手をかけたゴミ箱に入っているのは
さっき処理したものを拭いた大量のティッシュ…
潤「あっ…いや…えっと…違くて…」
途端にしどろもどろになる潤に
翔は不思議そうに近づく
翔「なんかあったか?」
潤を心配する視線
近づけられる顔に潤は自分の顔が赤くなるのを自覚する
潤「な…なんもないよ…?」
そう言って少しベッドの上で身動ぐと
翔「そうか…?」
まだ心配そうに見つめながらも
翔「体調よくないならゆっくりしてろよ?」
翔は潤の躰に布団をかけてくれて
ポンポン…と髪を撫でてから
ティッシュのいっぱい入ったゴミ袋を取替えて
病室を出て行った
助けてくれたあの日から変わらない翔の優しさに
潤はまた心臓が早くなりながら
ぎゅっと布団を握り締めてその背中を見送った