第3章 3
Kazunari side
冷静になるどころか
こみ上げてくるモノの量も
どろどろとしたどす黒さも
益々増していく
また見なくてもいい携帯を開いて
情報を眺める
―ファンをバカにしてる―
そんなコメントも沢山ある
そんなファンに心の中で呟く
…あの人はね何も考えてないんだよ
悪気なんてない
ただ,バカなだけ
描きたいものを描いて
やりたいことをやってるだけ…
その時良いと思うことしかやらない
でも…それが一番
人を傷つけることにも気づかない
何度も見た
記事の写真
あの女の自撮り写真
次から次へと情報は膨らんでる
そろそろ情報の信憑性もなくなってきた
そう思って消そうとしたとき
女が映る写真の中に
見覚えのあるものを見つけた
A4くらいのキャンバスに描かれた絵
カラフルで可愛い印象の抽象画
引っ越したばかりの部屋で見つけた
あの絵だった
まだ絵の具の乾ききっていなかったあの絵を
俺は触ってしまって…
そのまま抱かれた
俺を求めてくれたことが嬉しくて
落ちた絵にしがみついて快感に耐えた
その絵を愛おしいとさえ思って…
写真の中で筆を持っているのはその女
―…プツン…と何かが切れた
休憩後のリハーサルは滞りなく終わった
宮城県民の方たちと踊る曲…
CARNIVAL NIGHTなんかでは
ふざけて彼の手を取って走った
目が合えば微笑み
近くに居ればさりげなく触った
解散の合図があった瞬間
俺は誰よりも早くホテルへ帰った