第3章 3
Kazunari side
同棲はない…
この家に入ってそれはわかった
でも
同棲は,ない,
付き合っては,いない,
じゃぁ,何が,あったことなの?
言いたくない,考えたくない
言葉の数々が湧き上がってくる
智「…ごめん」
もう何度目かわからないその言葉を聞いて
思わず横にあったクッションを投げつけた
和「何に謝ってんだよ!」
クッションは大野さんにはあたらず床に落ちた
相手の女の詳細なんてどうでもいい
焼肉だの岩盤浴だのそんなのもいい
明日のコンサート…
それだって
何があったって俺達は
全力でやるだけなんだから関係ない
俺が聞きたいのはそんなことじゃない
なんで記者にすぐ否定しなかったのか
俺を抱いた次の週にあの女とデートしたのか…
…違う…
そんなことよりも
否定して欲しいのは…
和「…その女を…抱いたの?」
言葉にしたら吐き気がした
視界が揺らいで
眩暈に似た感覚が俺を襲う
早く否定して…
一言「抱いてない」と言ってくれれば
それを信じるから
そう思うのに,この人は…
視線を逸らしたまま
何も言わない
何も言わないのは
「肯定」とみなされる
これは芸能界の常識
目の前が真っ暗になっていく
和「もういい…」
そう呟いたことだけはなんとなく覚えてる
でもその後どうやって家に帰ったのか
家に帰って何をしていたのか…
何も思い出せない
気づいたら,宮城の空の下にいた