第1章 1
Kazunari side
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
智「お前さ,これ持って帰りなよ
俺ゲームなんてしないし,家にあったほうが便利だろ?」
差し出されたモノを見ながら
言葉を頭の中で反芻して
ようやく意味を理解した
…なんで?
理解はできても,納得はできない
なんで大野さんがそんなことを言うのか
だから,その荷物を受け取ることもできなかった
智「ニノの荷物だよ?」
知ってるよそんなの…
言いたいことはいっぱいあるのに
なかなか言葉にならなかった
智「…ニノ?」
俺の顔を覗き込んでくる
その瞳を見ても,大野さんの気持ちはわからない
和「…もう…ここに…来るなってこと?」
やっとの思いで言葉にした疑問に
大野さんの表情は強張った
智「…ん…これから,個展の準備で…この家,アトリエ状態になるからさ…」
大野さんは言い辛そうにしどろもどろ答えた
…そういう…こと?
煮え切らない気持ちはあったけど
その言葉に少しだけホッとした
…それなら…仕方ない
そう自分に言い聞かせた。
和「…ん…わかった…」
納得は…した
でも荷物を受け取ると
やっぱり,寂しさは込み上げてきた